天井桟敷

食。映画。音楽。本。旅。そしてベタ。

書籍・雑誌

その昔、N市では カシュニッツ短編傑作戦・・・マリー・ルイーゼ・カシュニッツ

1930年代から1970年代に活躍?した作家らしい。 前半は(おそらくこちらが元祖なのだろう)新鮮味に欠けるちょっぴり不思議なお話が続くため、やや斜めに読み進めてしまったが、後半の「長電話」(お気に入り)や「いいですよ、わたしの天使」など、どちら側…

レックスが囚われた過去に/アビゲイル ディーン

レックスが囚われた過去に | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp) サスペンスの括りかなー? とにかく痛く重苦しくどんどん沈み込んで浮上はない。 いやそれは絶対無理でしょうレベル。 極端な例とはいえ日本において現在進行形真っ…

嫉妬/事件・・・アニー・エルノー

嫉妬/事件 | 種類,ハヤカワepi文庫 | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp) 2022年ノーベル文学賞アニーさんてどんな人?好奇心で読み始め。 嫉妬は、 まんま、どストレート危ない女性のお話。 決して手放した男を取り戻したいわけではないだろう…

サンセット・パーク/ポール・オースター

bookwalker.jp まあまあ普通の人々を淡々と描くが、退屈になりかけた頃「は?」とか「え?」みたいな釘が打ち込まれ、都度都度眠気が吹き飛ぶ。 実は社会に大きな影響を及ぼすほどではない小さな曲者揃いで、この少々変わり者たちのちょっとだけ妙な日常がタ…

裏切り(上下)・・・シャルロッテ・リンク

www.tsogen.co.jp 久々に新作が出たら読みたい作家出現。 上巻は間違いなく一気に引き込まれる。後半は少々トーンダウンするが小細工なし堂々たる正統派であるのは間違いない。 特筆は主要登場人物数名の像が極めて詳細丁重に描かれていること。 負け犬、劣…

From Crook to Cook ・・・Snoop Dogg Cookbook

最近なんともかわいらしく見えるスヌープドッグ話題の料理本。 読めもしないのに原書で買ってみました。 写真が少なく字が多いためすっかりオブジェ扱いですが、ページをめくるとその陽気さに間違いなくテンション上がります。 むしろ以前よく見ていたBSの…

ミッドナイト・ライブラリー・・・マット・ヘイグ

ミッドナイト・ライブラリー|ハーパーコリンズ・ジャパン (harpercollins.co.jp) 小説であれ漫画であれ映画でも散々目にしてきた「もし別な人生が選べるなら」関連であることは承知だったが、これほど評判よければ違った視点かも?の期待虚し。 都度都度繰…

ストーンサークルの殺人/ブラックサマーの殺人 ワシントン・ポー

ストーンサークルの殺人 | 種類,ハヤカワ・ミステリ文庫 | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp) ブラックサマーの殺人 | 種類,ハヤカワ・ミステリ文庫 | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp) アマゾン評価がドンと高いがなんとなく様子…

パワー・オブ・ザ・ドッグ

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」 トーマス・サヴェージ[角川文庫(海外)] - KADOKAWA 映画の「?」は無事解氷したが、ほぼほぼ原作に忠実であり。 どこまでも鈍感で善良なジョージとローズ。 天才肌で溢れる能力と財力を隠しもせず力振りかざすフィルと、同じ…

幸せなひとりぼっち

幸せなひとりぼっち | 種類,ハヤカワ文庫NV | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp) スウェーデンのベストセラーで映画化されているらしい。 実直ガンコ人間の物語だが、過剰に甘すぎて自分のような斜めに曲がった大人向きではない。 過激描写ゼロ…

拳闘士の休息・・・トム・ジョーンズ

拳闘士の休息 :トム・ジョーンズ,岸本 佐知子|河出書房新社 (kawade.co.jp) ベトナム戦争、ボクシング、癇癪、精神病にまつわる怒りとパワーが充満した短編集である。 ひとつとっても相当ヘビーだが、初っ端から全てを詰め込み読者にも自分にも放たれる破壊…

千の輝く太陽・・・カーレドホッセイニ

www.hayakawa-online.co.jp 長い間他国から干渉され続けたアフガニスタン悲劇の歴史がやっと好転し始めた(かに見えた)2007年の出版であることがひどく悲しい。 2021年の今、誰もが当時と全く別な感想を抱くこととなる。この度のタリバンの国内掌握により、…

理不尽ゲーム・・・サーシャ・フィリペンコ

books.shueisha.co.jp最近ニュースで騒がれているベラルーシは1999年頃まで平穏な国だったのだ。 10年間昏睡状態の少年の目覚めと同時に2009年のベラルーシに放り込まれる。 全く知識のなかった国民生活を垣間見つつ、ここに描かれる2009年の不穏な独裁は10…

レイラの最後の10分38秒・・・エリフ・シャファク

www.hayakawa-online.co.jp 無残に命を絶たれた娼婦が死後10分38秒間意識を保ち続け、走馬灯のように過去を遡る物語である。 ひと昔前のトルコの社会や家族はかなり独特で、宗教や一族の在り方、恥として追われはみ出し者になっていく過程、同じく傷を抱えた…

ノマド:漂流する高齢労働者たち・・・ジェシカ・ブルーダー

www.shunjusha.co.jp 映画より先の原作。 季節労働を渡り歩く車上生活をいかにもアメリカ的ノリで前向きに押し切ろうとする経済破綻した高齢者達のルポである。 一瞬解き放たれた究極の自由に見えなくもないが、~80歳(それ以上)の家を持たない方々(女性…

オリーヴ・キタリッジの生活・・・エリザベス・ストラウト

www.hayakawa-online.co.jp 続編同様、ありがちな日常の断片が淡々とした文体で綴られるが、とにかく刺さって刺さって刺さりまくる。 表面的に強面なオリーヴも、つい卑しい気持ちが滲む人間臭いオリーヴもひっくるめ同じ船に乗っている感覚である。 田舎で…

オリーブ・キタリッジ、ふたたび・・・エリザベス・ストラウト

www.hayakawa-online.co.jp これほど登場人物のすぐ傍らに寄り添った体験は初めて。 嫌われ者だけど実はいい人、とは全く違う切り口で、ただただリアルに共感する。 関係ありそうでなさそうな人々の章も決してツマではなく十分厚みがあって深い。 オリーブの…

誕生日パーティー・・・ユーディト・W・タシュラー

books.shueisha.co.jp 近年一番印象深い国語教師ユーディト・W・タシュラーの新作。 余計な装飾のない文章力はもちろん全く先が見通せない超クールな展開の虜になる。 並大抵の再生物語ではない。 史上最悪とも言われる狂気の大地を生き抜いた経緯、国外に…

おちび・・・エドワード・ケアリー

www.tsogen.co.jp 骨格はマダム・タッソーの伝記風だがフィクションである。 にしても要所要所のインパクトが強烈すぎて、読んだ翌朝目覚め際に描写がまざまざ蘇るほどである。 出だしは風変わりが強調されたおちびちゃんの数奇な物語体だが、すぐにこの子の…

終身刑の女・・・レイチェル・クシュナー

www.shogakukan.co.jp 全く救いのない絶望的格差の話に気が滅入る。 富める者と貧困の二極化はいよいよ固定化し、人生は出生でほぼ決まる世の中になりつつあるようだ。

国語教師・・・ユーディト・W・タシュラー

今年、否、近年ベスト1 出だし、唐突に去った卑怯な男に対する重い系女の恨み節かと思いきや、徐々に長い時間をかけ自力で自分を立て直す様、ささやかで満ち足りた空間に身を置く幸せの物語である。 過去の傷を蒸し返され心乱されるも、以前のような同等の立場…

メインテーマは殺人・・・アンソニー・ホロヴィッツ

www.tsogen.co.jp 作者が主役本人として事件に絡む異色の展開。 スピルバーグやピータージャクソン、残念な扱いのダミアンルイス!などなど実在の人物もチョロチョロ参戦するためソワソワ落ち着かない気持ちになる。 これを面白いとみるか茶化し過ぎととるか。 度々意識が大筋から逸れ…

掃除婦のための手引書・・・ルシア・ベルリン

allreviews.jp 贅肉は一片もなくどれもカッコいい。 フィクションの境は曖昧だが、肉体的苦境にあっても精神は屈しない強靭さと、どうってことない体を装うドライさが超クール。 虐待や痛みや乾いた屈辱を簡潔にポンポン放り投げどんどん前進する様が潔い。

マンソン・ファミリー悪魔に捧げたわたしの22ヶ月・・・ダイアン・レイク

www.harpercollins.co.jp マンソンファミリー、シャロンテート事件についてあらすじ以上の知識はなかったが、この14歳にしてファミリーの一員となった少女の体験は痛々しすぎて下手なサイコ小説より空恐ろしかった。 ファミリーに属した約2年の間に一生分の…

隠された悲鳴・・・ユニティ・ダウ

eijipress.ocnk.net アフリカ、ボツワナのサスペンス。 今だ一部で祈祷師や魔女狩りがはびこるボツワナで、汚れない少女の体を切り取り自分たちの繁栄を願う儀礼殺人という恐ろしい風習が続いていること、正義に燃える優秀な若き女性達が台頭していること、このふたつを軸…

死者の国・・・ジャン=クリストフ・グランジェ

www.hayakawa-online.co.jp 前半はこれでもかと盛りまくる性倒錯者のオンパレード。 そっちネタ半分、質半減、という印象。 ひたすら衝撃を与え続けて引っ張る手法がいただけない。 さらに全ての顛末を朗々聞かされるラストは実に面倒くさい。 そちら系にも十分長けた…

三つ編み・・・レティシア・コロンバニ

www.hayakawa-online.co.jp イタリア、毛髪加工工場を任された若い娘の身を焦がす恋と工場再建の奮闘。 インド、カースト外不可触民(触られても見られてもいけない)女性の差別からの脱出劇。 カナダ、並々ならぬ努力で地位を築いた女性弁護士の病とエリート争いの戦い。 3地…

皮膚の下の頭蓋骨・・・P・D・ジェイムズ

www.hayakawa-online.co.jp アガサクリスティー風の上品さを奏でる良質ミステリー。 表現力が豊かで久々肌に合う感覚を味わった。 女性探偵として未熟であることを自覚しつつ最大の誠意をもって事件に対峙する凛とした佇まいが魅力。 事は思い描くような明快解決とはいか…

沈黙の少女・・・ゾラン・ドヴェンカー

沈黙の少女 |書籍詳細|扶桑社 北欧同様ドイツにも小児性愛者がウヨウヨしているのか?風出だし、さすがに誰もが食傷気味ゆえ後半捻りが入る。 著者はSFなども手掛けているそうで、なるほど少々ファンタジーぽい。 刑事や探偵の活躍もなく現実離れしているため最後はポカン…

小さな国で・・・ガエル・ファイユ

www.hayakawa-online.co.jp アフリカ、ブルンジの内戦を潜り抜けフランスへ移住したラッパーの自伝、かと思いきや半分はフィクションらしい。 とはいえ内戦前の美しいブルンジで子供が子供らしく過ごした煌めく描写はあまりに瑞々しく、その後の混乱で全ての幸せが断ち切られた地…