天井桟敷

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オリーブ・キタリッジ、ふたたび・・・エリザベス・ストラウト

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これほど登場人物のすぐ傍らに寄り添った体験は初めて。

嫌われ者だけど実はいい人、とは全く違う切り口で、ただただリアルに共感する。

関係ありそうでなさそうな人々の章も決してツマではなく十分厚みがあって深い。

オリーブの「いけ好かない奴」や「つまらない者」「過去の記憶にあまり残っていない者(記憶力はいいので知っている)」に対する見方の変化や間違った過小評価に恥じ入る苦さなど噛みしめつつ月日はどんどん流れるが、中ほど一気に年齢が進み驚きのあまり不安が募る。

オリーブの本質は常に一貫しているが、高齢で体の自由が利かなくるにつれ違う角度から物事を見る機会が増え思考を反芻することで、新たな気づきと人生の落としどころを掴んで潔い。

いかしかつて不平不満であったり苛立ちや怒りに駆られていたことが次第に混沌とし、たとえオリーブといえ不安や怯えの虜となる老いに抗えない終盤は物悲しい。

アマゾンプライムのドラマ「オリーブ・キタリッジ」でエミー賞を獲得したフランシス・マクドーマンドリチャード・ジェンキンスは本当に素晴らしかったが、活字の中でも彼らはその続きを活き活き演じてくれた。

ビル・マーレーがさらに活躍するであろう続編のドラマ化を熱望してやまない。

やはり1作目を読まずしてこの物語の完結はない。ということで久々ペーパーバック版(電子化されていないのが残念)を注文。