近年一番印象深い国語教師ユーディト・W・タシュラーの新作。
余計な装飾のない文章力はもちろん全く先が見通せない超クールな展開の虜になる。
並大抵の再生物語ではない。
史上最悪とも言われる狂気の大地を生き抜いた経緯、国外に逃れてなお強烈なフラッシュバックを背負って生きた50歳の現在とが交互に綴られる。
フィクションとはいえポル・ポトの描写は凄惨で昔見た映画キリング・フィールドの数十倍のリアルさで迫ってくる。
故郷を捨ててもルーツは消せない第二の人生の苦悩にもただただ共感しかない。
謎と疑問が解けた後のラストが最悪にして最良の落としどころであるのが秀逸で胸が詰まる。