骨格はマダム・タッソーの伝記風だがフィクションである。
にしても要所要所のインパクトが強烈すぎて、読んだ翌朝目覚め際に描写がまざまざ蘇るほどである。
出だしは風変わりが強調されたおちびちゃんの数奇な物語体だが、すぐにこの子の聡明さと芯の通った人間性に魅了される。
嘘か真か?ベルサイユといえばベルバラ程度の知識しかない者にとって宮殿の様子やパリ(ちっとも花のパリではない)の描写に愕然の連続である。
勝手にフランスを美化しすぎて生きてきたが、冷静に考えれば当たり前の事実に今更気づいてよかったかもしれない。
登場人物すべてクセが強すぎて誰ひとり忘れようがなく緊張に弛みはない。
蝋人形制作も時代とともにおどろおどろしく変化を遂げ、フランス革命後は混乱と狂気でグロテスク化するが、嫌悪を超越して目が離せない。
ガツンと一撃されて醒める本である。