天井桟敷

食。映画。音楽。本。旅。そしてベタ。

書籍・雑誌

1922 … スティーヴン・キング

たとえプロットが使い回しの過去作品に酷似といえど。 中編短編であるならまだまだ読ませる力健在。 惹きつけ離さない表現力が最大の魅力、癖になる心地よさ、その部分クリアしある水準満たした、とも言える。 残り2編も後日翻訳されるらしい。絶望が期待に転じた…

毒の目覚め … S.J.ボルトン

殻に籠もって暮らす心身傷だらけのクララが、事件を紐解く過程で次第に内なる強さと美しさを解き放ち、人として当たり前の尊厳を掴んで大いなる前進を果たす物語である。 事件の謎解き部は若干弱いが、後半山場はクララの正義感と逞しさと冷静な行動力に圧倒…

ウォッチメイカー … ジェフリー・ディーヴァー

宣伝文句最高傑作までいかなくも、大きなハズレもなかろうと。 急いで掴んだディーヴァー本。 猟奇事件をキワモノで押しまくる上巻イイカンジー、期待膨らむ後半戦、いきなり犯人ネタ晴らし。種明かしはどこまでも言い訳がましく説明的、意外と言うよりアリエナイ。そんなことない…

ドライヴ …ジェイムズ・サリス

ああやはり原作もいい。 ライトでソフトなハードボイルド。章は短く簡潔。 なのに情景は線画のように鮮明。 映画は小説から漂うニュアンスをよりロマンス寄りに、繊細かつグラマラスに仕上げていっそう香しい。

三本の緑の小瓶 D・M・ディヴァイン

一章毎語り手が入れ替わり早い段階で犯人は絞られるが、確信がもてない部分だけで引っ張り続け逆に途中やめられない。 家族描写はシンデレラ風で、プロットも古風、それでもこのようなに落ち着き払った正攻法は安定感バツグンである。 但し中毒性はない。

わっ!ヘンな虫 … 西田賢司

虫(約コスタリカ)が好きで好きでたまらん!具合が溢れる書である。 好きすぎるあまりこだわり写真テクをも極めてしまった著者による、愛くるしい虫たちの写真もオドロキのオンパレード。 植物と見紛うほど美しい虫こぶ、寄生した蜘蛛を自在に操るヒメバチ、キノコを培養するアリの…

フロスト気質上下 … R.D.ウィングフィールド

残念いよいよ最後のフロスト気質。 分厚い上下巻をじっくり読んだ。つもり。 相変わらず下世話なフロスト節は絶好調、いい人ネタの隠し球もチラチラ、 毎度お馴染み複数事件を併走、今回は誘拐事件が軸となっているため徐々にヒートアップ、終盤の緊迫感押し寄せる時間との…

夜のフロスト … R.D.ウィングフィールド

アップテンポで歯切れ良く、期待を裏切らない安定感はいつも通り。 流感による人手不足の中次々と事件が積み重なり、展開がせわしなく慌ただしいが、混乱なくキチンと読ませるテクはさすが。 フロストのギャグはてんてこ舞いになるほど快調饒舌、まるでコントの域。 事件の残…

夜がはじまるとき … スティーヴン・キング

何度ガッカリしても手に取ってしまうこの惰性。熱烈なファンというよりマインドコント ロールくずれ。 誰の反応も気にかけず、思いついたことを好き勝手に書き付けた、それだ け。 ラストの糞尿ストーリーはついに崖っぷちから落ちた感。残念すぎ。 大御所でなければ決して許されな…

氷姫 … カミラ・レックバリ

ミレニアムに続くスウェーデン女流作家のミステリーシリーズである。 抵抗なく、むしろどんどんストーリーは追えるのだが、 女性らしい細やかな人物描写や恋愛駆け引きには違和感を感じるばかり で、どうも居心地悪くしっくりこない。 ミレニアムに比べ暗部の詰めがかなり甘く最後までガツ…

フロスト日和 … R.D.ウィングフィールド

ストレスなしのミステリー、期待裏切らず最後まで楽しく読み切り。 「ド゙ラキュラは棺桶にいる?」が今回のツボでした。

クリスマスのフロスト … R.D.ウィングフィールド

ゴチャゴチャ込み入ってるように見えるが、実はフロストがドタバタしているだ けで、読み手側の混乱は一切ない。 むしろ軽い。軽快なので長さが全く気にならない。 フロストは隙だらけのオッサンであり、序盤からすんなり親近感を持つことが できる。 コテコテのオヤジギャグで緊張弛…

ザ・ロード

そして原作。 映画の前半はほぼ原作に忠実で、映像が鮮やかにフラッシュバック。 後半部は子供の目線から映像倫理的に無理な描写もあり、その反動もあっ てラストは更に泣ける。わかっていても再度泣ける。 相変わらず文章に無駄なく、太い1本の筋勝負。 やはり。 すべ…

監禁 … ジェフリー・ディーヴァー

リンカーンシリーズではないが、リンカーンライムが一番輝いていた時期に書かれたものであることを確認して購入。 やはりこの頃一番脂が乗っていたのだ。 淀みなく留まらず海まで押し流される。 今、とにかく活字、をスラスラ一気読みしたい渇望が満たされる。 いつの間にかまた…

余波…ピーター・ロビンスン

バンクスはかなりタイプの男。2夜連続夜なべで一気に読み切り。 特異な虐待殺人をメインに据え、過剰防衛、誤捜査、自身の離婚問題、恋人とのいざこざ、など盛りだくさん、右も左もぼうぼう火の車で飽きさせない。 過重な積み荷のせいで、下巻中程までは常に速度オーバ…

もの食う人びと…辺見庸

上からではなく、小さくて細かい視点である個々の食から世界が見えてくるルポ本である。 最初は軽い気持ち、と著者が述べる通り、ベトナム、ドイツの刑務所あたりフフと笑いを含む場面もある。 しかしコソボ、チェルノブイリ、ソマリア、と進むにつれ、それがおおよそ食事と呼べ…

東大合格生のノートはかならず美しい。

雑誌を眺める感覚で読んでいい。 このカンジ…。 著者の太田あやさんがベネッセで編集を手がけていたとあり合点。 あの進研ゼミの付録小冊系なのだ。 ウチの子供の中学はノートの書き方を教えてくれない。 基本ノートの見本として子供に見せるのがいい。 予習。書…

脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」…茂木健一郎

子供に読ませようと買ってみた。 難しいことに直面すると脳は力を発揮。 時間に追いたてられることで更にドーパミン分泌が活性化され。 達成に伴う快感はクセになる。 睡眠後の早朝勉強は脳が真っ新で効果大。 書く。喋る。聞く。を総動員しより多くの引き出しに…

静寂の叫び … ジェフリー・ディーヴァー

交渉人と犯人と聴覚障害者の人質のお話なのだが、全体的に雑な印象。 交渉人には正直マッタク魅力を感じないし。 聴覚障害のある人質は『暗くなるまで待って』のヘプバーンと妙にダブる。 犯人もとりたてる程の変わり種ではない。 犯人に刃向かう人質と主犯の攻防シー…

プリズン・ストーリーズ

ほんと彼ときたら。。。転んでもナニかしら使えるモノを拾ってからじゃないと起きない。タイプ。ちゃっかり大王。なる先入観で読み始めたが。 有能。自信家。な部分は変わらず。しかし自身を守るシールドが強固で本当の意味で強い。ことに気づいた。プライド高き…

還らざる日々…ロバート・ゴダード

ダラダラした夏休み期間中。TVでオリンピック&高校野球を見ながらゴロゴロ転がって読むにはピッタシ!な一冊(正確には上下二冊)。途中。飲んだり喰ったり。トイレに何度立ってもかまわない。軽い軽い。早い早い。単純単純。サックサク。筋書きは………えっと………どーでもエエ―っちゃ…

無実(上下)‥ジョン・グリシャム

静かな街で残虐な殺人事件が起き、早期解決を望む地元住民感情のプレッシャーの中、警察は事件から5年後証拠不十分のまま二人の男を逮捕する。直感と思い込み以外何もない。にもかかわらず、検察側は証言と証拠を強引にねつ造し、弁護料を払うことができないが故…

あなたに不利な証拠として‥ローリー・リン・ドラモンド

本書は劇的な展開を見せる事件そのものに重点を置いているものではなく、5人の女性警官が苦悩をリアルに淡々と語る短編集である。著者本人も過去警官の経験をもつ。グチャグチャであったりひどい暴行を加えられた遺体と正面から向き合い、日々銃撃され銃を突きつ…

血と暴力の国…コーマック・マッカーシー

コーエン兄弟最新作の原作であるが、なるほど納得のカッコよさ。くだくだした説明を省いた簡素に加え、場所、人物の線引きなきスルーな文体、引用符抜きのセリフパンチがドライに効きまくる。 ひょんなことから汚い金を手に入れた男とその妻。そして殺し屋と…

コフィン・ダンサー…ジェフリー・ディーヴァー

犯人があまりにも現実離れしていて、のめり込みにくい。そういう意味で『石の猿』の方をオススメ。それでも相変わらず展開がスマートで難なく読ませるあたりはさすが。『とりあえず本でも読んで時間を潰すか』な場面にピッタリハマリ。ハズレなし。

浮世の画家…カズオ イシグロ

冒頭より至る所『小津』色を感じたが、やはり彼は川端康成でも谷崎潤一郎でもなく小津から多大なる影響を受けたらしい。娘、孫、先生、弟子…平凡な人物が次々登場する度に一瞬立ち止まってしまう。スラスラ読み進まないのだが。それは決して不快ではなく、普…

だからおまえは落ちるんだ、やれ!…吉野敬介

タイゾー議員がパクってさらなる箔が付いた本でアル。 とにかく読み始めからビリバリなビリーパワーに圧倒される。力で読ませる。波動が伝わる。こういう魂に触れる本は理屈抜きにおもしろい。私が子供らに言ってるのとおんなじ。言い訳はみっともない。黙っ…

石の猿…ジェフリー・ディーヴァー

デイーヴァーの近作にハズレなし。折しも中国ネタ。中国人がよく描けてるんである。ていうか。人間の性分は何人であろうと共通なわけで。人物像が決まればあとは環境に当てはめるだけで。悪玉善玉が紙上で活き活き動き出すんである。その工程がこの人のスゴ…

侍女の物語…マーガレット・アトウッド

空想近未来。原子力発電の事故または戦闘により人間の生殖機能が著しく低下。国家は女性を子供が『生める女』と『生めない女』に振り分ける。生めない女は生産作業等に従事、生めそうな女には再教育し子供を作る作業を強いる。それは高等官僚の侍女となるこ…

1/2の埋葬…ピーター・ジェイムズ

う~ん。軽すぎてマンガ以下。事件も犯人も被害者も刑事もタイクツ窮まりない。なんとか完読。