「勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇」特設サイト| 集英社新書
今夏の高校野球は金足農業の快進撃とスター軍団大阪桐蔭のそつなく揺るぎない圧勝で大いに盛り上がった。
それ以前深く記憶に刻まれた試合筆頭はやはり駒大苫小牧vs早実戦だろう。
斎藤祐樹も素晴らしかったが、あれからすっかり田中将大の大ファンである。
以後駒大苫小牧の甲子園代表はパタと途絶え不思議に思っていた。
私学という複雑な組織の中、監督業の大変さは薄々想像したが、勝てば勝つほど些細な事が大事に化け、魑魅魍魎に憑りつかれて身動きがとれなくなる孤独と疎外感はかなり深刻なものであった。
この本はまさに天国と地獄、アラビアのロレンス前篇後編の体である。
初めて白河の関を超え優勝旗が北海道に渡るまでの波に乗りきった前半と、頂点に立つ者に対する強い当たり、過剰なバッシングで歯車が狂い転がり落ちてゆく後半と。
香田誉士史監督の熱い人と為りを語りつつ、甲子園で勝ち続けることが学校をがんじがらめにし、多くの人を混乱に陥れ、捻じれに捻じれた現象を描く。勝って喜びもつかの間、妬み嫉み足を引っ張り地に叩きつける社会の残酷も嘆かわしい。
監督業は決して並大抵の神経で指揮を執ることができない過酷で孤立無援な仕事であることに衝撃を受ける。