天井桟敷

食。映画。音楽。本。旅。そしてベタ。

まるで天使のような・・・マーガレット・ミラー

まるで天使のような
驚いた。面白かった。すごく。
発掘された名作。1962年作の新訳だが、古さは微塵もなく。展開も登場人物にもまったく臭みなし。
探偵登録証を持つクインは序盤だらしないが、抜群のユーモアと人情と誠実と情愛を備えており、彼自身まっとうな軌道に向かう描写も率直で自然体でスマートである。
後半犯人の独白からラストにかけての急降下はなにがあろうと止まらない勢い。
横領と失踪あるいは殺人不明事件と新興宗教の密接がグルグル絡み合い最後パッと1本になるマジックは相当お見事。
読後やっぱりね、という単純な感想では終わらない壮絶さがあり、むしろ犯罪は割に合わない苦さばかりが残る。
パトリシアハイスミスも大好きだが年代の埃臭さは否めなかった。厳選リフォームされた新訳は大穴であった。