天井桟敷

食。映画。音楽。本。旅。そしてベタ。

ザ・ロード

長い長い絶望の果て、人はどこまで人らしさを失わず生きられるのか。

その道には幾多もの苦難の仕掛けがあり、標識もなければ終わりもなく、父

と息子はただ漠然と南を目指す。

それは人生を指しているのかもしれないし、徳や信仰の深さを試す道程な

のかもしれない。

堕落した人間のおぞましさは凄まじく、父は飢えと恐怖の狭間、全身全霊で

子を守り、常に善き人であれ。と粘り強く説く。

そしてついに息子の信心が父を越える日がやってくる。

息子は人として生きる信念を確立するのである。

心身の不調が清く正しい精神を容易に曲げる場面はせつない。

たとえその先に希望はなくても、思想を脈々と伝承し、人は歩み続けるしか

ないのだろう。

ヴィゴ・モーテンセンの演技は更に凄味を増し、その力強さと揺るぎない確信に

ただただ圧倒される。

強烈な余波がいつまでも消えない作品である。