長い長い絶望の果て、人はどこまで人らしさを失わず生きられるのか。
その道には幾多もの苦難の仕掛けがあり、標識もなければ終わりもなく、父
と息子はただ漠然と南を目指す。
それは人生を指しているのかもしれないし、徳や信仰の深さを試す道程な
のかもしれない。
堕落した人間のおぞましさは凄まじく、父は飢えと恐怖の狭間、全身全霊で
子を守り、常に善き人であれ。と粘り強く説く。
そしてついに息子の信心が父を越える日がやってくる。
息子は人として生きる信念を確立するのである。
心身の不調が清く正しい精神を容易に曲げる場面はせつない。
たとえその先に希望はなくても、思想を脈々と伝承し、人は歩み続けるしか
ないのだろう。
ヴィゴ・モーテンセンの演技は更に凄味を増し、その力強さと揺るぎない確信に
ただただ圧倒される。
強烈な余波がいつまでも消えない作品である。