マンソンファミリー、シャロンテート事件についてあらすじ以上の知識はなかったが、この14歳にしてファミリーの一員となった少女の体験は痛々しすぎて下手なサイコ小説より空恐ろしかった。
ファミリーに属した約2年の間に一生分の間違いと苦痛を味わったもの、洗脳を解き人生を正しい方向に軌道修正できたのは幸いである。
雲のような理想論、洗脳、金欠、攻撃的かつ破壊、終末思想に傾き、殺戮へと進む様はオウムのそれと酷似している。
カルト教祖は皆巧みな話術で強いリーダーを装い、飴と鞭で支配する術に長けた優秀なペテン師である。
人の懐に滑り込み、心を操る才能を持つ人物というのは呪術師や祈祷師など太古から存在していたのだと思う。
なぜ両親も兄弟もいるアメリカの少女がほんの14歳にしてこのような連中に取り込まれてしまったかについては、当時のヒッピームーブメントの闇の部分が大いに絡む。
信じ難いこと、親が自由の解釈を誤り育児を放棄し教育を怠り、子供が一番親を必要とする時期、親が一番側にいて注意を怠らないよう気を配る時期、彼女は独り立ちを強要され帰る家もなく文字通り野に放たれたのである。
事件以上にその生い立ちの不遇に一番衝撃を受ける。