ヒルビリー・エレジー J・D・ヴァンス、関根光宏/訳、山田文/訳 | ノンフィクション、学芸 | 光文社
映画ウィンターズ・ボーンで初めて知ったアメリカ白人貧困層ヒルビリー。
にわかに信じがたい実情であるが、この町を這いだしシリコンバレー投資会社社長まで上り詰めた人物の実話とあって大変興味深く読んだ。
貧困には違いないが、前半はさすがにリスを撃ってシチューにするほどの赤貧に匹敵する見せ場はなく、家族のルーツや停滞した泥のような地域性が淡々と綴られる。
ところが海軍に入隊し外部と接触することで広く世の中を知り、自分の可能性に気づくところから人生が劇的に転換する。
本人が冷静に分析しているように、学はなくても強い信念を持ち守ってくれた親族の愛情が根底にあり、その後も真摯に取り組むことで信頼を得た結果、その実力と実績で多くの助け導いてくれる人に出会うことができた。
淀んだ泥沼から抜け出せたのは、いくつもの小さな幸運ととてつもない努力の結果ではあるが、この小さな援助を国の政策レベルとして取り入れるなら、貧困層の子供たちの未来は変わると訴える。
とはいえ今、近い将来この拡大しすぎた貧富の溝が縮まるという希望が持てないのも事実である。