天井桟敷

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ありふれた祈り ・・・ ウィリアム・ケント・クルーガー

ありふれた祈り (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

悲劇的な事故や事件が連鎖し、田舎町のありふれた人々に潜む小さな悪意や疑惑によってさらに不穏な圧迫感が増幅しどんどん悪い方に流されていく。
全く資質が異なる少年兄弟はそれぞれ違う方法で打開を試みるが、終盤になって幼く危うかった弟の冷静で深い洞察、そのありふれた祈りに心打たれる。
事件こそ実に単純でありふれた偶発だが、普通の人々の性格や些細な行動の丁寧な描写の積み重ねが深い物語を作りあげた。牧師の父も重要で、必要以上ドラマチックにならぬよう至る所で抑止の役割を果たしている。