天井桟敷

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メランコリア。

メランコリア [DVD]

これっぽっちの容赦もないラース・フォン・トリアー作中、軽めで難易度低い内容であった。

しかし掘り下げは十分、監督本人を悩ます鬱のだるさを余すことなくリアルに描いている。

キルスティン・ダンストなかなかやるじゃん、だったし、24の残像を見事払拭できたキーファー・サザーランドは幸い。

前半はどうしようもなく鬱にのまれた花嫁と、振り回されてウンザリ疲れ果てた周囲のイラつきが描かれていて、無味乾燥の結婚式が悪い急流に乗って無惨砕け散るヒューマンドラマとなっている。

後半は一転、ナゾの惑星メランコリアが地球に接近するSFドラマ仕立てで、刻一刻迫りくる衝突による地球終焉のカウントダウンを不安に駆られたまま疑似体験できる。

真っ向から真剣切り、常に独特の解釈で屈折した表現法を用いるこの監督の内部では、すでに新たな確信的妄想が黒いコロナの如く渦巻いていることだろう。