ボブ・デイランというひとりの男を6人の俳優が、少年。語り部。若き詩人。ただの男。皮肉屋。世捨て人。それぞれを演じ分ける。
中でも。女にだらしなく家庭を顧みない生々しい男の部分を演じたヒース・レジャーと、対外的にクールな言葉を操る枯れ行く詩人を担当したケイト・ブランシェットが秀逸。
彼が口にする「フォークは死んだ。残るのは伝承音楽。」は。
そうなんだろう。と思う。
彼が紡ぐ、言葉と言葉と言葉の美しさと強さはホンモノ。
でも言葉が力となる。というのはまやかし。
言葉は風に乗り。川に落ちて海へ流され。溶けてなくなる。
その時流に乗れば爆発的に受け入れられるが100年後には朽ち果てる。
メッセージを込める無意味さ。歌う空しさ。放蕩の危うさ。
落ち葉舞い散る季節に。
なんて!ピッタシ。