天井桟敷

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あなたに不利な証拠として‥ローリー・リン・ドラモンド

本書は劇的な展開を見せる事件そのものに重点を置いているものではなく、5人の女性警官が苦悩をリアルに淡々と語る短編集である。著者本人も過去警官の経験をもつ。
グチャグチャであったりひどい暴行を加えられた遺体と正面から向き合い、日々銃撃され銃を突きつけられる危険と隣り合わせのストレスを抱え、決して消えない痛みと苦しみが綴られている。
現実からそう遠くない切り口は静かであるが、慰めや理屈では押
さえこめない感情は相当ヘビーである。
ことさらアメリカという国の警官は心身とも相当タフであることを強いられる。あるいは自分には到底務まらないと思うに至る。

どれも語られること以上にせつない。特にラストの一編『サラ』
正義を貫けない。一生自分を許せない。

赦し。とは?
誰が誰に対して何の許しを乞うのか?
人は人生のどこでどうやって折り合いをつけるのか?
深く心を揺さぶられる。