冒頭より至る所『小津』色を感じたが、やはり彼は川端康成でも谷崎潤一郎でもなく小津から多大なる影響を受けたらしい。
娘、孫、先生、弟子…平凡な人物が次々登場する度に一瞬立ち止まってしまう。スラスラ読み進まないのだが。それは決して不快ではなく、普段ほとんどやらない読み返す行為にまで及び、その偏った文体にすっかりハマる。好き嫌いが分かれるところではあるが。
『世の中でいちばんいいものは夜に集まる』
ルノアール的ムーラン・ルージュ的イメージがどっと溢れる。
浮き世風俗の儚さを執拗に追い求める画風の師匠と袂を分かち、結果明暗を分ける件が世の流れとシンクロして色合いがいっそう深まる。
厚みがあって読後が重い。
久々にイロイロ考える。
他3冊買い込んだ。