天井桟敷

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マッチポイント

マッチポイント(通常版)|ジョナサン・リース・マイヤーズ|ACBF-10446

すっかり憑き物が落ちたウッディ・アレン
インテリで洗練されたダイアン・キートンと別れ、キュートな都会っこミア・ファローと暮らし始めたもの、彼女の養子と恋に落ち、散々な修羅場をくぐり抜けた後々の作品は身につけていた装飾品をひとつひとつハズしている感あり。ここに至ってもうかなり裸に近い“愛or愛欲”のみが展開する。
ただ。彼本来のセンスの良さ、ちょっぴりヒネた視点は相変わらずなのだが、この完成度は熟成の域である。

最初からキシキシした空気が漂っている。
上流から転落したノラと上流の仲間入りをしたクリスの立場が逆転するあたりから、急速に閉塞感が増す。すっかりその美しさに目を奪われてしまうノラがただのヒステリー女に成り下がる一方、クリスが画に描いたような上流社会に取り込まれその甘みから抜けられなくなってしまう様、その先にある何かすごく危険な匂いにすごい力で引き込まれてしまう。

ウルサイ初期の作品も好きだが、この余裕かましたオトナの香りにアタマ‐クラクラすっかり酔いしれてしまった。