天井桟敷

食。映画。音楽。本。旅。そしてベタ。

書籍・雑誌

出口のない農場・・・サイモン・ベケット

イギリスの作家はしっくり感バツグンである。個性派刑事は登場せず、当事者目線で互いの忌まわしい隠し事が並行して暴かれる流れはかなり美味しい。まず刑事の個性ありき、とりまく環境の刷り込みがやたら水っぽく感じていたこの頃。ミステリー読み過ぎ深読みのハラハラを…

彼女のいない飛行機・・・ビュッシ・ミシェル

突如知らない人物が割って入る結末はガッカリだし、メロメロすぎる男女事情も甘ったるいフレンチミステリー。謎解きに期待したわけではないが読み急ぎたい気持ちにさせる文体ではある。

街の鍵・・・ルース・レンデル

殺人事件の謎解きより街にうごめく人の不可解に重きあり。上級お嬢様から下級ホームレスまで人間模様を描くが、語り口が上質なので下流の人物描写が薄い。人間味に深さはないが最後まで飽きずに読める。きれいにまとまって完結、とも言える。http://www.hayakawa-…

キャロル・・・パトリシア・ハイスミス

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309464169/従来型ラブストーリー観を根底から覆す。若き女性が愛に躓き、自分と回りに厳しい分析と解析を繰り返し人間性を成熟させ愛を昇華させる物語。昔数冊読んだが、濃密な内容と裏腹、ドライ目線と飾らない文体がクールでとに…

凍える墓・・・ハンナ・ケント

http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784087606997同性目線で、この文体はかなりカッコイイ。1829年アイスランド。実在した最後の女性死刑囚について。凍てつく気候、風の音、痩せた家畜と大地。火にくべられる糞また糞、窓に張られた魚の皮、気の利いたニューアイテムが情景の奥…

ガール・オン・ザ・トレイン

相当比較されているゴーン・ガールよりコチラの方が好感高し。アチラは視点が転換した後半冒頭の衝撃が最大のピーク、病的要素過多で少々やりすぎ感があった。コチラは実際あっておかしくない隣の芝生レベルだが中断したくない切迫度はずっと上。重要アイテ…

新車の中の女

調子に乗って新訳ふたたび、1966年ビンテージしかも少々苦手なフランスミステリー。コトが複雑すぎて途中怪奇やSFに転じる?不安に駆られる。結局終盤、犯人より動機、計画、犯行について長々解説を聞かされるハメになるが、このように全てを説明しなければ納得できない結末…

まるで天使のような・・・マーガレット・ミラー

驚いた。面白かった。すごく。発掘された名作。1962年作の新訳だが、古さは微塵もなく。展開も登場人物にもまったく臭みなし。探偵登録証を持つクインは序盤だらしないが、抜群のユーモアと人情と誠実と情愛を備えており、彼自身まっとうな軌道に向かう描写も率直で…

ミンコット荘に死す・・・レオ・ブルース

少年の助手が手伝ったり茶化しがあったり、毒殺描写はあるがストーリーに毒なし。 途中これは青少年向けミステリーなのか?疑うほど気取っている。 あまりにも英国的正統派とでも言えばいいのか、上品が書評高位に直結した、自分にとって望まない落とし穴的作品。

声・・・アーナルデュル・インドリダソン

なんとなく戻ってしまう北欧。アイスランド。殺人話を読んでいつか行ってみたい気持ちになるのも変な話だが、コレ真。憧れ。シンプルな人間関係に無理はなく。ものすごく洗練された感じもなくてすっと馴染む。家族や人間関係、社会の歪とか万国変わらないお…

デス・コレクターズ・・・ジャック・カーリィ

海辺に住む刑事は穏やかでカッコよさげ。文体もサラサラ乾いた手触り。殺人に絡む異常系人物はゾロゾロ出てくるが、むしろ良識抜け落ちた病的コレクターの狂気に気を取られる。ある意味、金を出せば集められる普通のコレクションに飽きた挙句の金持ち病とも言える。強烈なインパクト…

ありふれた祈り ・・・ ウィリアム・ケント・クルーガー

悲劇的な事故や事件が連鎖し、田舎町のありふれた人々に潜む小さな悪意や疑惑によってさらに不穏な圧迫感が増幅しどんどん悪い方に流されていく。全く資質が異なる少年兄弟はそれぞれ違う方法で打開を試みるが、終盤になって幼く危うかった弟の冷静で深い洞…

犯罪・・・フェルナンド・フォン・シーラッハ

情状酌量だったり思わず加害者側に肩入れしてしまったり情感に訴える実際の事件に基づいた犯罪集。実話と思えば1,2編はナルホド頷くところもあるが、単調な語り口は退屈に変わり、惰性となる。 猟奇フィクションの読み過ぎかもしれない(反省)。

漆黒の森・・・ペトラ・ブッシュ

ドイツ・ミステリーだが、とりたてドイツを連想させる背景も特色もなし。追い立てられるような展開はなく、ゆったり読める。悪くないが、ラスト「そうだったのか!」ポンと膝打つ驚きも響きもない。

ノア・P・シングルトンの告白・・・エリザベス・L・シルヴァー

死刑を待つ女囚の独白。家族、被害者とその母、ボーイフレンド、友人、関わった人物は皆脆弱で、なんとなく合流し大きな濁流となって死刑判決へなだれ落ちる。諦めと甘受の中、恩赦のかすかな救いを見つめ心揺らしながらも淀み続ける。真相と過去が相殺されたかに…

その女アレックス

2014年ミステリーベスト1らしいが。 ?ハテ?一体どこに称賛の値があるのか? そもそも初っ端の事件が消化不良のまま別事件に移行、接続部も弱ぎて釈然としない。 仮説と強調しながら刑事が全容を語るが、くどい解説は興ざめるばかり。 人物像はどれもぼやけ、猟奇っ…

ゴーン・ガール

映画の前に原作。 生粋ニューヨーカーの妻とミズーリ育ちの夫。 上巻。結婚生活が徐々にズレズレ~冷え冷えする過程と人物描写が巧みで、事件に発展するのも致し方なしという印象、どちらかといえば夫贔屓に描かれる。 ところが下巻は一転、出だしから妻の変質狂ぶりが急…

ヴァイオリン職人の探求と推理・・・ポール・アダムス

イギリス人作家によるオーソドックスなミステリー。 いたって上品。刺激はない。 ここにきてガツン系を切望している自分がチト怖い。

静かな水のなかで・・・ヴィヴェカ・ステン

ついまた北欧スウェーデンミステリー。 情景のどか、人情味たっぷり、猟奇抜き正統殺人、これぞ北欧デショー的緩さ。 ゆえ、動悸息切れとは無縁、ナゾ解きに新鮮味はなく、ミステリー初級感は否めない。 北欧ドラマがあれほど面白いのだから、もっとスゴイやつがあるにち…

凍氷 ・・・ ジェイムズ・トンプソン

極夜カーモスの続編、警部カリの事件簿。 顛末はソフトポルノだが、大戦時のフィンランドの暗部を軽く撫でることでふっくらした印象。 ただ妻ケイトの家族話は盛りすぎ。 複雑な伏線はなくラストも穏やかで前作同様飽きずに読みやすいが、食い足りなさは残る。

催眠 ・・・ ラーシュ・ケプレル

ついつい北欧連チャン。 青少年が病んでいる。日本でも猟奇的事件があったばかり。まんざら絵空事ではない。 生い立ち教育云々のレベルではなく、もって生まれた精神構造なのだろう。 全てがカチっと繋がり丸く納得のいく展開ではないが、最後まで飽きずに読める。 …

白の闇 ・・・ ジョゼ・サラマーゴ

突如人類(犬は別枠)が視力を失いそれが伝染するとしたら。 もしもシリーズ暫定3位に決定。 ギュウギュウ詰めに隔離された人々は混乱し次第にモラル秩序を失い野獣化。 外部の伝染も加速し、減り続ける食糧の争奪、悪党の台頭、不衛生と蛮行は壮絶を極める。 ただひとり…

極夜 ・・・ ジェイムズ・トンプソン

結婚後フインランドに移住したアメリカ人によるライトめ北欧ミステリーで、流行りのキッツい事件とは一線を画す。 夜が明けない季節、外気マイナス40度、過度のアルコール摂取、自殺率の高さ、家庭内暴力、宗教、人種差別、むしろ過酷すぎる風土やフィンランド人気質の描写が最大の魅力。 全く…

パインズ 美しい地獄 ・・・ ブレイククラウチ

シャラマン映画化に反応して買ってしまった。 前半のナゾナゾはそれなり読み進められる。 しかし終盤、キングのダメダメ失速パターンのデジャブ。ラスト丸見え。 シャラマンの大好物。それは間違いない。

隣の家の少女 … ジャック・ケッチャム

乗ったら最後、上昇一方ノンストップリンチを傍観するハメになる。 実際幾度となく現実に同様の事件がおこっているし、映画においてはもはや規制すらできないほどエスカレートする一方。違いと言えば成り行きの描写が細部まで詳細であることくらいか。 集団になるほどなぜか…

閉店時間 … ジャック・ケッチャム

短編集。 残虐に一切手加減なし。今回もどうだどうだ?という押しをマッタク感じないドライにハマる。 川を渡って。はウエスタン映画が急激に色あせる程リアル。 史実かもしれない疑問すら湧く。 実際あって不思議ないギリギリバイオレンスの虜になる。

黒い夏 … ジャック・ケッチャム

初ケッチャム。 生まれ持った倫理観の欠如、捻れた性質、殺人犯の生活圏の日常を淡々と追う物語。 常道を逸しすぎた猟奇さもないし読者を煽る表現もない、調子に乗りすぎたり勢い余ったりしない冷淡さが魅力。 あってほしい期待は裏切られ決して甘くない結末はリアル…

少年は残酷な弓を射る … ライオネル・シュライヴァー

ノンフィクションと勘違いするほどリアリティ滲むフィクションである。 邪悪な資質を持って生まれた子と、教養もキャリアもあり、洞察力に長け感受性豊かである自分を自慢とする母親との仁義なき戦いの物語である。 上巻中ほどまでうんざりするような御託が続き相当労力を強いられる…

コズモポリス … ドン・デリーロ

帯にクローネンバーグとロバート・パティンソン君。バロウズ傾倒のクローネンバーグらしい。裸のランチよりややライト気味でスタイリッシュ。メロディを奏でる様スゴイ勢いでコロコロ言葉転がる。ストーリーより表現。少々センチでありながら詩的。読者に媚びない、一貫オレ流。好きと嫌いとハッキリ二択。自分的にはこー…

なぜ蜂は大量死したのか … ローワン・ジェイコブセン

3/4ほど読み終えた所(一段落)で一旦保留したまま2年の月日が流れ。 先日ラジオが大量に消えたミツバチの話題に触れ、まさに読みきるなら今でしょ!とばかりに一気読み。 タコ部屋に押し込まれたミツバチたちが、受粉奴隷として農場から農場を渡り歩きながら、農薬まみ…